こんにちは、ジンです。
皆さん1度は「本邦」や「我が国」という言葉を見聞きしたことがあるとおもいます。
どちらも「日本」を指している言葉ですが、きちんと使い分けることができていますか?
映画「トップガン マーヴェリック」2022年5月27日、本邦初公開!
宣伝じゃないよ。笑
映画「翔んで埼玉Ⅱ(仮)」は、我が国の映画史に残る一作になるだろう。
楽しみにしています!笑
かく言う筆者は、医薬品医療機器等法の中で、この2つの言葉が使い分けられているのを発見するまで使い分けについて意識したことはありませんでした。
本ページでは、医薬品医療機器等法の中に登場する「本邦」と「我が国」の使い分けについて、筆者の調べをもとにご紹介します。
辞書での定義
まずは、「本邦」と「我が国」の違いについて辞書で調べてみました。
辞書 | 「本邦」の意味 | 「我が国」の意味 |
広辞苑 | この国。わが国。 | われらの国。自分の国。 |
大辞林 | 我が国。 | 自分の国。わたしの国。 |
大辞泉 | この国。我が国。 | われわれの国。私たちの国。 |
日本国語大辞典 | 自分が身をおいている、この国。また、自国。わが国。 | 1 自分の国。われわれの国。 2 自分の郷里。 |
感覚的には分かっていたことですが、どちらも<私たちの国>や<この国>という意味のようです。
日本人が日本でこの言葉を使った場合には<日本>を意味していることになります。
一方で、日本語を話せるアメリカ人がアメリカで「我が国」と言った場合には、<アメリカ>を意味することになりそうです。
今回は医薬品医療機器等法という、日本の法律の中で使われていますので「本邦」や「我が国」はどちらも<日本>を意味する言葉であると理解してよいと思います。
「本邦」と「我が国」はどちらも<日本>を意味している、というところまでは分かりましたが、その違いや使い分けについては辞書からは読み取れませんでした。
違いや使い分けについては、実際に医薬品医療機器等法の条文を読んでみて、探っていくしかなさそうです。
「本邦」と言う言葉の登場
ということで、まずは「本邦」という言葉についてです。
「本邦」が医薬品医療機器等法に登場したのは、今から約40年前、昭和58年(1983年)5月のことでした。
法律の名前がまだ、薬事法だった頃ですね。
外国事業者による型式承認等の取得の円滑化のため関係法律の一部を改正する法律(昭和58年法律第57号)
昭和58年5月25日公布、昭和58年8月1日施行
により、当時の薬事法が改正されて、「本邦」という言葉が登場しました。
改正前の薬事法では、外国で製造した医薬品等を日本国内で販売するには、国内企業が輸入承認を受けて輸入するしか方法がありませんでした。
それが、改正によって、外国企業が直接製造承認を受けて、日本に向けて医薬品等を輸出することができるようになりました。
現在でいう「外国製造医薬品等製造販売承認」制度(法第19条の2)の誕生です。
体外診断用医薬品の場合は、現在の「外国製造医療機器等製造販売承認」(法第23条の2の17)ですね。
当時の制度においても、現在の「選任製造販売業者」にあたるポジションである「国内管理人」が存在し、現在とほとんど変わらない形で運用されていたようです。
…話がそれてしまいました。
昭和58年の改正当時の条文を載せておきます。
(外国製造医薬品等の製造の承認)
1 厚生大臣は、第14条第1項に規定する医薬品、医薬部外品又は同項に規定する化粧品若しくは医療用具であつて本邦に輸出されるものにつき、外国においてこれを製造する者から申請があつたときは、品目ごとにその製造についての承認を与えることができる。3 第一項の承認を受けようとする者は、本邦内において当該承認に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具による保健衛生上の危害の発生の防止に必要な措置を採らせるため、厚生省令で定める基準に該当する者を、本邦内に住所を有する者(外国法人で本邦内に事務所を有するものの当該事務所の代表者を含む。)のうちから、当該承認の申請の際選任しなければならない。
昭和58年法律第57号による改正後の法第19条の2、第1項(上)と第3項(下)
まだ体外診断用医薬品という言葉が法律中で定義されておらず、医薬品の条文が適用されていた時代ですが、日本を意味する言葉として「本邦」という言葉が使われていました。
「我が国」と言う言葉の登場
さて、次は「我が国」という言葉についてです。
「我が国」が医薬品医療機器等法に初登場したのは意外と最近で、平成30年(2018年)12月のことでした。
環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号)
【平成28年12月26日公布、平成30年7月6日改称、平成30年12月30日施行】
により、医薬品医療機器等法が改正されて、「我が国」という言葉が条文中に登場しました。
この改正前までは、医薬品医療機器等法中の日本を意味する言葉は「本邦」で統一されていましたが、この改正により「本邦」という言葉と「我が国」という言葉で使い分けされるようになりました。
改正当時の条文を載せておきます。
<改正前>
その用途に関し、外国(医療機器又は体外診断用医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で本邦と同等の水準にあると認められる医療機器又は体外診断用医薬品の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列し、又は電気通信回線を通じて提供することが認められている医療機器又は体外診断用医薬品であること。<改正後>
第23条の2の8第1項第2号の比較。平成28年12月16日法律第108号による改正前(上)と改正後(下)
その用途に関し、外国(医療機器又は体外診断用医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で我が国と同等の水準にあると認められる医療機器又は体外診断用医薬品の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列し、又は電気通信回線を通じて提供することが認められている医療機器又は体外診断用医薬品であること。
「我が国」が登場する条文はいくつかあるのですが、「本邦」という言葉が「我が国」という言葉に置き換えられたものはこの条文を合わせて3つだけです。
医薬品、体外診断用医薬品(医療機器含む)、再生医療等製品に関連する、それぞれ同じような3つの条文で「本邦」から「我が国」に置き換わりました。
なぜ「本邦」を「我が国」に置き変えたのでしょうか?
なぜ「本邦」ではダメだったのでしょうか?
「本邦」が当てはまらない理由や「我が国」が当てはまる理由を考えれば、両者の違いが掴めそうです。
「本邦」と「我が国」の使用例
医薬品医療機器等法の条文で「本邦」と「我が国」がどのように使い分けられているのかを比較するために、条文からフレーズを抜き出してみました。
語句 | フレーズ | 条項 |
---|---|---|
本邦 | 本邦に輸出される医薬品 | 第13条の3第1項 |
我が国 | 我が国と同等の水準 | 第14条の3第1項第2号 |
本邦 | 化粧品であつて本邦に輸出されるもの | 第19条の2第1項 |
本邦 | 本邦内において当該承認に係る医薬品 | 第19条の2第3項 |
本邦 | 本邦に輸出される医療機器 | 第23条の2の4第1項 |
我が国 | 我が国と同等の水準 | 第23条の2の8第1項第2号 |
本邦 | 体外診断用医薬品であつて本邦に輸出されるもの | 第23条の2の17第1項 |
本邦 | 本邦内において | 第23条の2の17第3項 |
本邦 | 本邦に輸出される指定高度管理医療機器 | 第23条の2の23第1項 |
本邦 | 本邦又は外国のみにおいて基準適合性認証を行う | 第23条の7第2項第4号 |
本邦 | 認証を本邦において行う | 第23条の7第2項第4号 |
我が国 | 我が国が締結する条約その他の国際約束 | 第23条の7第2項第4号 |
我が国 | 我が国と同等の水準 | 第23条の7第2項第4号 |
本邦 | 本邦にある登録認証機関の事業所 | 第23条の10第3項 |
本邦 | 本邦に輸出される再生医療等製品 | 第23条の24第1項 |
我が国 | 我が国と同等の水準 | 第23条の28第1項第2号 |
本邦 | 再生医療等製品であつて本邦に輸出されるもの | 第23条の37第1項 |
本邦 | 本邦内において | 第23条の37第3項 |
本邦 | 本邦に輸出されるもの | 第77条の2第1項各号列記以外 |
本邦 | 本邦において厚生労働省令で定める人数に達しない | 第77条の2第1項第1号 |
本邦 | 本邦において既に製造販売の承認を与えられている医薬品 | 第77条の2第2項第1号イ |
本邦 | 本邦において既に製造販売の承認を与えられている医療機器 | 第77条の2第2項第1号ロ |
本邦 | 本邦において厚生労働省令で定める人数に達しない | 第77条の3第1項 |
本邦 | 本邦において厚生労働省令で定める人数に達しない | 第77条の4第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される承認対象プログラム医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第9条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される承認対象プログラム医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第10条第2項 |
本邦 | 本邦に輸出される医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第11条 |
本邦 | 本邦に輸出される承認対象プログラム医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第19条 |
本邦 | 本邦内において...必要な措置を採らせる | 平成25年11月27日法律第84号附則第20条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される承認対象プログラム医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第20条第2項 |
本邦 | 本邦に輸出される医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第21条 |
本邦 | 本邦に輸出される認証対象プログラム医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第23条第3項 |
本邦 | 本邦に輸出される医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第24条 |
本邦 | 本邦に輸出されるプログラム高度管理医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第39条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される高度管理医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第39条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される高度管理医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第41条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出されるプログラム管理医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第42条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される管理医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第42条第1項 |
本邦 | 本邦に輸出される管理医療機器 | 平成25年11月27日法律第84号附則第44条第1項 |
医薬品医療機器等法では「本邦」は19回、「我が国」は5回登場するようです(改正法の附則を含めると「本邦」34回、「我が国」5回)。
19回登場する「本邦」の使われ方を見てみると次の順に使用例が多かったです。
- 「本邦内において」「本邦において」が10回
- 「本邦に輸出される」が8回
- 「本邦にある」が1回
一方、5回登場の「我が国」は次のように分けられました。
- 「我が国と同等の水準」が4回
- 「我が国が締結する条約」が1回
なんとな~くですが違いがみえてきました。皆さんはわかりましたか?
「本邦」という言葉は地理的に見た日本を、「我が国」という言葉は政府や制度など概念的な日本を表しているように思えてきました。
簡単にいうと、「本邦」は日本という場所(領土)、「我が国」は日本という国家を意味するということです。
これを踏まえたうえでもう一度フレーズを確認してみましょう。
- 「本邦内において」「本邦において」→「日本の領土内において」「日本という場所において」
- 「本邦に輸出される」→「日本の領土に輸出される」
- 「本邦にある」→「日本という場所にある」
- 「我が国と同等の水準」→「日本という国と同等の水準」
- 「我が国が締結する条約」→「日本という国が締結する条約」
なんとなく、しっくりきますね。
「本邦」が定義されている法律がある(あった)
「本邦」と「我が国」の違いを探るため、医薬品医療機器等法以外の他の法律で定義されていないか調べてみました。
医薬品医療機器等法の中では、「本邦」についての定義は規定されていませんが、他の法律の中には「本邦」が明確に定義されているものがありました。
- 外国為替及び外国貿易管理法(昭和24年12月1日法律第228号)
- 連合国財産補償法(昭和26年11月26日法律第264号)
- 外国人登録法(昭和27年4月28日法律第125号)<平成24年7月9日廃止>
- 接収貴金属等の数量等の報告に関する法律(昭和27年8月5日法律第298号)<昭和34年6月1日廃止>
- 沖繩産糖の糖価安定事業団による買入れ等に関する特別措置法(昭和39年3月31日法律第42号)<昭和47年10月1日廃止>
- 外国人漁業の規制に関する法律(昭和42年7月14日法律第60号)
上記の1、2、6番目の法律は現在も有効であり、その条文中には「本邦」についての規定が今もなお存在しています。
なお、「我が国」を定義している法律は見当たりませんでした。
まぁ、「我が国=日本」ということは考えなくても分かりますからね…
他の法律によると、まず「本州、北海道、四国、九州」は「本邦」に含まれるようです。
これら以外の島々については、どこまで「本邦」に入るのか、法律ごとに決まっているようです。
とはいえ、どの島々が「本邦」に含まれるのかということは、重要ではありません。
着目したいのは「本邦」とはなんぞや、というところです。
- 本邦とは…島をいう
- 本邦とは…地域をいう
- 本邦とは…島しょをいう
各法律では、どこが日本という場所(個々の法律の影響を受ける地域)なのか、を定義しています。
このことからも「本邦」とは「日本という場所、土地、領土」を意味していると言えるでしょう。
参考までに「本邦」が定義されている(定義されていた)条文を載せておきます。
外国為替及び外国貿易管理法
連合国財産補償法
外国人登録法<平成24年7月9日廃止>
【昭和46年12月31日法律第130号による改正前】
接収貴金属等の数量等の報告に関する法律<昭和34年6月1日廃止>
沖繩産糖の糖価安定事業団による買入れ等に関する特別措置法<昭和47年10月1日廃止>
【昭和46年12月31日法律第130号による改正前】
外国人漁業の規制に関する法律
「本邦」は日本という場所、「我が国」は日本という国家
「本邦」と「我が国」の使い分けについて、なんとなく分かりましたでしょうか?
本ページでは、医薬品医療機器等法の中での使い分けについて考察していますが、広辞苑等の辞書で確認したように、一般的には両者で明確な使い分けはされていないのが現状です。
あまり気にするようなことではないのでしょう。
また、「本邦」や「我が国」という言葉は文書中ではよく見ますが、どちらも日常会話ではあまり出てきませんよね。
私自身、最近台湾の友人とお話する機会が増えましたが、「本邦は…」「我が国は…」なんて言いません。「日本は…」と言っています。
使い分けに詳しい方がおられましたら是非ご一報下さい!
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