こんにちは、ジンです。
2024年1月22日に「毒物及び劇物指定令の一部を改正する政令案」のパブリックコメントが開始されました。
→2024年5月29日付けでパブリックコメントの結果が掲示されました。e-Gov(政令、省令)で閲覧できますのでご興味がある方はご確認ください。
このまま問題なく進んだ場合、2024年5月頃に政令が公布される予定です。
→2024年5月29日付けで政令が公布されました。
今回の改正では、
- 新たに劇物に指定(1物質)
- 劇物から除外(1物質)
- 劇物からの除外濃度を変更(1物質)
など、全部で3つの物質について変更があります。
今回の改正について詳しく調べましたので、備忘録がてらまとめてみたいと思います。
本ページでは、例のごとく大人の事情でCAS登録番号(CAS RN®)は掲載していません。
※「CAS RN」はAmerican Chemical Societyの商標又は登録商標です。
ライセンスがないと掲載できないのです(小声)
該当する物質のCAS登録番号は、厚生労働省ホームページにそれぞれ「CAS No.」として記載がありますのでご確認ください。
- フルペンチオフェノックス(資料1)
- シクロピラニル(資料2-1)
- ダイアジノン(資料2-2)
「公的な文書」に掲載する場合はライセンス不要ですねー。うらやましい
※体外診断用医薬品は医薬品であるため、「毒物及び劇物取締法」の対象から外れています。一方で、標準品単体等の研究用試薬として流通させているもの(体外診断用医薬品に該当しないもの)については、毒物または劇物に該当する場合には「毒物及び劇物取締法」の規制を受けることになります。
新たに劇物に指定 フルペンチオフェノックス
まずは、新たに劇物に指定される物質からです。
今回の改正で、フルペンチオフェノックス及びその製剤が劇物に指定されます。
法令名(毒物及び劇物取締法)
4-クロロ-2-フルオロ-5-[(RS)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル 5-[(トリフルオロメチル)チオ]ペンチル エーテル
別名
フルペンチオフェノックス
製剤については、すべての濃度のものが劇物に該当することとなります。
フルペンチオフェノックスは、現在、殺ダニ剤として農薬登録手続き中のようです。
農薬登録手続きの際に農林水産省から厚生労働省に情報提供があり、今回の毒劇物改正についての検討がおこわれました。
その経緯から、フルペンチオフェノックスについては、農業用品目(毒劇法第4条の3第1項の規定により、農業上必要な毒物又は劇物であって厚生労働省令で定めるもの)に分類されます。
施行日は、2024年6月1日です。
また、フルペンチオフェノックスの劇物指定については、これまでの改正と同様に、一部の規定で経過措置期間が定められています。
施行日時点で製造・輸入・販売実態がある場合には、経過措置期間中は、法第3条、第7条、第9条の規定は適用されません。
経過措置期間が終わってから適用されますので、それまでに、
- 業登録を取得していない場合には、
- 業登録を取得(法第3条)
- 毒物劇物取扱責任者の設置、届出(法第7条)
- 業登録を既に取得している場合には、
- 取扱品目の変更の登録(法第9条)
を済ませておく必要があります。
図に起こすとこんな感じです↓↓
また、施行日時点で現に存する製品(メーカー在庫、流通在庫、社内在庫)については、経過措置期間中は、法第12条第1項、第22条第5項で準用する第12条第1項、第12条第2項の規定は適用されません。
経過措置期間終了後から適用されますので、それまでに、
- 「医薬用外劇物」の表示(法第12条第1項、第22条第5項で準用する第12条第1項)
- 「劇物の名称」「劇物の成分、含量」等の表示(法第12条第2項)
を容器と被包に施さなくてはなりません。
この経過措置規定は、施行日時点で現に存する製品(メーカー在庫、流通在庫、社内在庫)のみが対象であり、
経過措置期間中に新たに製造等されたものについては、経過措置は適用されません。
なお、経過措置規定で定められるルールは、
- 業登録を取得(法第3条)
- 毒物劇物取扱責任者の設置(法第7条)
- 取扱品目の変更の登録(法第9条)
- 容器に「医薬用外劇物」を表示(法第12条第1項、第22条第5項で準用する第12条第1項)
- 容器に「劇物の名称」「劇物の成分、含量」等を表示(法第12条第2項)
上記のみです。
上記以外の条項については経過措置規定はなく、施行日から適用されますのでご注意ください。
<経過措置がない例(施行日から適用されます)>
- 貯蔵や陳列をする場所に「医薬用外劇物」を表示(法第12条第3項、第22条第5項で準用する第12条第3項)
- 劇物の譲渡手続(法第14条)
- 18歳未満には譲渡不可(法第15条)
- 廃棄方法(法第15条の2)
- 運搬等についての技術上の基準(法第16条)
劇物から除外 シクロピラニル
続いて2つ目は、もともと劇物に指定されていた物質です。
法令名(毒物及び劇物取締法)
1-(3-クロロ-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル)-5-[(シクロプロピルメチル)アミノ]-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル
別名
シクロピラニル
シクロピラニルは、これまで「有機シアン化合物及びこれを含有する製剤」として包括的に劇物に指定されていました。
今回の改正で劇物から指定が解除され、一般的な物質と同じように取り扱えるようになります。
施行日は、公布日の2024年5月29日になります。
この物質はもともと劇物に指定されていましたので、既に「医薬用外劇物」の表示がされていると思います。
今回の改正によって劇物ではなくなるので 「医薬用外劇物」の表示を消す必要があります。
この表示の削除については、特に経過措置等が定められていません。なぜでしょうか?
表示に関する法律の条文を見てみましょう。
毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は劇物の容器及び被包に、「医薬用外」の文字及び毒物については赤地に白色をもつて「毒物」の文字、劇物については白地に赤色をもつて「劇物」の文字を表示しなければならない。
毒物及び劇物取締法 第12条第1項
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
つまり、
- 劇物には「医薬用外劇物」と表示しなさい
- 毒物には「医薬用外毒物」と表示しなさい
という風に、該当する場合の表示義務が定められています。
裏を返せば、該当しない場合の非表示義務はありません。
だから経過措置期間が定められていないのです。
とはいえ、だからといって、
漫然と毒劇物表示をしたままにしておくのもよろしくありません。
毒劇物に該当しないものに対して毒劇物の表示がされていると、購入者(使用者)側の混乱を引き起こす可能性もありますし、誤認させるような表示と受けとられてしまう可能性もあるかもしれません。
これらを防ぐためにも毒劇物の対象から外れた場合には、可及的速やかな毒劇物表示の削除が推奨されます。
劇物からの除外濃度を変更 ダイアジノン
最後3つ目は、ダイアジノンです。
法令名(毒物及び劇物取締法)
2-イソプロピル-4-メチルピリミジル-6-ジエチルチオホスフエイト
別名
ダイアジノン
ダイアジノンは、これまで、マイクロカプセル剤は25%を超えるもの、その他の製剤は5%を超えるものが劇物として指定されました。
今回の改正で、マイクロカプセル剤の劇物除外濃度が25%→30%に、変更されます。
劇物の範囲が狭くなった感じですね。
ダイアジノンは農薬として利用されており、毒劇法では農業用品目(毒劇法第4条の3第1項の規定により、農業上必要な毒物又は劇物であって厚生労働省令で定めるもの)に分類されているため、農業用品目の規制濃度範囲も併せて変更されることになります。
ネキリムシとかコガネムシの幼虫を駆除するのによく使われるよね。
施行日は、公布日の2024年5月29日になります。
ダイアジノンの含有量が25%を超えるマイクロカプセル製剤については、もともと劇物に指定されていますので既に「医薬用外劇物」の表示がされていると思います。
このうち、25%を超えていて30%以下(25%< x ≦30%)の含有品は改正によって劇物から除外されますので、「医薬用外劇物」の表示を消さなくてはなりません。
ダイアジノンの一部劇物除外についても経過措置等は定められていませんが、その理由は上のシクロピラニルと同様ですね。
使用者側の混乱を引き起こさないためにも、可及的速やかな毒劇物表示の削除が推奨されます。
まとめ
以上、2024年6月改正の毒物劇物についてでした。
今回の改正では、全部で3つの物質の劇物区分が変更されています。
- 新たに劇物に指定(1物質)
- 劇物からの除外濃度を変更(1物質)
- 劇物から除外(1物質)
経過措置期間がいつまでなのか、経過措置で免除になる規定・免除にならない規定等
注意することはたくさんあります。
法令遵守に努めたいと思います。
参照資料
- 「毒物及び劇物指定令の一部を改正する政令」(令和6年5月29日政令第196号)
- 「毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令」(令和6年5月29日厚生労働省令第91号)
- 「毒物及び劇物指定令等の一部改正について(通知)」(令和6年5月29日付け医薬発0529第1号厚生労働省医薬局長通知)
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