こんにちは。ジンです。
以前、別のページで、2022年12月から施行される特定用符号の表示、罰則ありについてご紹介しました。
「特定用符号※」とは、医薬品等を特定するための符号で、商品コードや製造番号(ロット番号)、使用期限等の情報を含むバーコードのことをいいます。
※一部を除くすべての医薬品、医療機器、再生医療等製品で特定用符号の表示が義務化されます。
特定用符号があるおかげでトレーサビリティの確保ができ、医薬品等の平時の流通管理や不具合発生時の回収管理に大きな利点があります。
この特定用符号の表示に関して、先日、厚生労働省から「特定用符号を割り当てるシステムを文書化することが望ましい」という旨の通知が発出されました。
通知:医療機器及び体外診断用医薬品を特定するための符号を割り当てるシステムの取扱いについて
(令和4年11月10日 薬生監麻発1110第5号)
本ページでは、
- 通知で求められていることは何か?
- 特定用符号を割り当てるシステムとは何か?
- どの製品でシステムの文書化が必要か?
についてご紹介したいと思います。
※本ページはISO13485関連の内容となっているため、体外診断用医薬品や医療機器に関係しています。再生医療等製品や体外診断用医薬品以外の医薬品ではあまり関係ありません。
通知で求められていることは何か?
早速ですが、まずは通知を確認してみましょう。
医療機器及び体外診断用医薬品を特定するための符号の容器への表示が求められている場合、ISO 13485:2016 7.5.8「Identification」の規定を踏まえ、当該符号を割り当てるシステムを文書化することが望ましい。
令和4年11月10日 薬生監麻発1110第5号
原文は PMDAホームページ で直接ご確認いただけます。
今回発出された通知では次の3点について述べられています。
- 特定用符号を割り当てるシステムを文書化せよ。
- その根拠はISO13485:2016 7.5.8「Identification」である。
- 文書化は、特定用符号表示対象品を扱っている場合のみでよい。
ひとつずつ確認しましょう。
特定用符号を割り当てるシステムを文書化せよ
まずは、特定用符号を割り当てるシステムを文書化せよというお達しです。
通知中では「文書化することが望ましい」という柔らかい表現で示されていますが、「望ましい」「推奨される」という表現があった場合には、他に合理的な理由がない限り「~せよ」と読み替えた方がよいと考えます。
公の機関が何かを推奨するときには、かならず理由があるハズですからね。
今回の通知では文書化の理由(根拠)についても言及されています。
根拠は ISO13485:2016 7.5.8「Identification」
通知によると、ISO13485:2016 7.5.8「Identification」の規定がその根拠となっているようです。
実際に規定を確認したいと思いますが、ISO規格は国際規格であるため英語で記載されています。そこで、代わりに、これに対応する日本の規格JISQ13485:2018を引用してみたいと思います。
こちらが該当する部分です↓↓
適用される規制要求事項によって要求される場合,医療機器に機器固有識別(UDI)を割り当てるシステムについて文書化する。
JISQ13485:2018 医療機器-品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項 7.5.8 識別 より一部を引用
ここでいう「適用される規制要求事項」とは、「医薬品医療機器等法における特定用符号に関する要求事項」と捉えることができます。
また、「機器固有識別(UDI)を割り当てるシステム」は、今回の通知でいう「特定用符号を割り当てるシステム」に相当します。
「特定用符号を表示せよ」という医薬品医療機器等法上の要求事項があるため、「特定用符号を割り当てるシステムの文書化」が必要、ということですね。
上で挙げたように、JISQ13485:2018(ISO13485:2016)では、特定用符号を割り当てるシステムの文書化についての規定があります。
しかし、一方で、QMS省令では特定用符号を割り当てるシステムの文書化について規定されていません。
そのため、通知中では「QMS省令の規定により」ではなく「ISO13485…の規定を踏まえ」という表現になっています。
「QMS省令では規定は無いけれど、ISO13485では規定が有るから文書化が望ましい」
ということを通知では言っていますね。
対象は特定用符号の表示義務がある製品のみ
特定用符号を割り当てるシステムの文書化は、全ての体外診断用医薬品や医療機器で必須というわけではありません。
文書化の対象は特定用符号の表示義務がある製品だけですので、特定用符号を表示しなくてもよい製品だけを取り扱っている企業では、文書化は必要ありません。
例えば、次の製品は特定用符号の表示義務はありませんので、今回の通知の対象外となります。
- 一般用検査薬(一般用医薬品である体外診断用医薬品)
- 一般消費者用の医療機器
- 製造専用医療機器
もちろん、これら表示義務がない製品に加えて、表示義務のある製品も合わせて取り扱っている場合には、特定用符号を割り当てるシステムの文書化が必要です。
特定用符号を割り当てるシステムとは何か?
特定用符号の表示義務がある製品を取り扱っている場合は特定用符号を割り当てるシステムの文書化が必要であるというところまでは分かりました。
では「特定用符号を割り当てるシステム」とは、何を指しているのでしょうか?
「特定用符号」とは、医薬品等を特定するための符号で、商品コードや使用期限、製造番号(ロット番号)等の情報を含むバーコード(または二次元コード)のことをいいます。
※特定用符号についてのおさらいは特定用符号の表示、罰則ありをご活用ください。
ですので「バーコード(二次元コード)の作成手順」のようなものが「特定用符号を割り当てるシステム」に相当すると考えられます。
また、「商品コードやロット番号、使用期限等」の情報もバーコードを構成する一員と捉えることができますので、これらを付番するための手順も「割り当てるシステム」に含まれると考えられます。
なんとなく分かりましたでしょうか?
- バーコード(二次元コード)作成手順
- 商品コード付番手順
- 使用期限設定手順
- 製造番号(ロット番号)付番手順
等の文書化が望ましいということですね。
後記
今回の通知では、特定用符号を割り当てるシステムの文書化について述べられていますが、
バーコードや商品コード、使用期限、製造番号のうち、使用期限と製造番号については、おそらく皆さん既に文書化できているのではないでしょうか。
製造管理や品質管理の手順等で、使用期限の設定方法やロット番号の付番方法について規定されている企業もあれば、製品標準書に「有効期間又は使用期限」や「製品銘板」として記載されている企業もおられることでしょう。
また、商品コードについては、平成29年時点で既に、PMDAが作成したリーフレットを用いた協力依頼がされています。
3 標準コード付与のための社内管理ルールはつくりましたか?
「ISO13485;2016 医療機器の品質マネジメントシステム」では、機器固有識別(UDI)、トレーサビリティに関するシステム・手順の文書化が求められています。
平成29年11月28日 薬生機審発1128第1号薬生安発1128第7号 通知 別紙リーフレット
これは、市販後の安全等確保のために重要なことです。
各社が定め、運用している品質管理規定に標準コード付与のためのルールを追加して、運用することが望ましいと言えます。
原文は PMDAホームページ にてご確認いただけます。
ここでも「望ましい」という表現ですね。
ですので、今回の通知で新しく追加されたことは実質、バーコード(二次元コード)作成手順の文書化のみ、ということになりますね。
以上です。ありがとうございました。
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