普段私たちが医薬品を手に入れるためには、病院や薬局、ドラッグストア等に行ったり、配置薬を頼んだりします。
ひとくちに医薬品といっても、それぞれの医薬品は販売区分(分類、種類)に分けられます。
販売区分によって、
- 薬局でしか購入できないのか、ドラッグストアでも購入できるのか
- 薬剤師が販売しなければならないのか、登録販売者でも販売できるのか
- 医師が処方するのか、購入者が自分で選んで購入できるのか
- 特定販売(インターネット販売)可能かどうか
等々の取扱いのルールが決まっています。
本ページでは、医薬品の分類(販売区分)について解説するとともに、体外診断用医薬品がどの区分に分類されるのかを確認したいと思います。
医薬品の販売区分は3つ
まずは、医薬品の販売区分についてです。
日本で正規に販売されている全ての医薬品は、次の3つの販売区分に分けることができます。
「薬局医薬品」、「要指導医薬品」、「一般用医薬品」です。
3つのうち「要指導医薬品」と「一般用医薬品」は、薬局やドラッグストアで購入できる医薬品です。
要指導医薬品と一般用医薬品は「市販薬」や「大衆薬」「OTC薬」と呼ばれますね。
一方で「薬局医薬品」とは、「要指導医薬品」や「一般用医薬品」以外の医薬品のことをいいます。
「薬局医薬品」はドラッグストアでは購入することができず、入手するには医師に処方してもらうか、薬局に行くしかありません。
医薬品の3つの区分、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
要指導医薬品
まずは「要指導医薬品」です。
「要指導医薬品」は医薬品の区分のひとつとして医薬品医療機器等法で規定されています。
次の3つの条件を満たした医薬品が、厚生労働大臣の指定を受けることで「要指導医薬品」という区分に分類されます。
- ヒトの身体への作用が著しくない(効果が強すぎない)
- 使用する人が自分の選択で使用することを目的としている(医師の処方箋不要)
- 薬剤師から対面で情報提供や指導を受ける必要がある(薬剤師がいるお店でのみ購入可能)
※実際には、「大臣パワー」のような鶴の一声で指定するわけではなく、「薬事審議会(旧 薬事・食品衛生審議会)」という会議体で検討に検討を重ねられた結果をもとに、厚生労働大臣が指定します。
要指導医薬品として指定を受けると、厚生労働省告示という形で官報に掲載されます。告示は、厚生労働省法令等データベースサービスでご確認いただけます。
なお、告示では、要指導医薬品の一般的名称のみしか記載されません。一般的名称ではなく実際の販売名(製品名)を確認したい場合は、製品名の一覧が厚生労働省ホームページに掲載されています。
また、要指導医薬品を購入するときには、指定3条件にもあるように、薬剤師から対面で情報提供や指導を受けなければなりません。
「対面で」とあるため、インターネット販売は不可です。
対面販売は面倒だなぁ、とか、年齢・持病その他もろもろ聞かれるのはうっとうしいなぁ、とか、感じるかもしれませんが、医薬品の適正使用を推進するためには必要なことですね。
(国民の役割)
医薬品医療機器等法 第1条の6
国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
私は要指導医薬品に限らず、医薬品を買うときには必ず指導を受けるようにしています。
(現場の薬剤師さん・登録販売者さんがどんな説明をされるのか、こっそり勉強させてもらっています。笑)
めんどくせぇーヤツだなぁ、おい
あ、はは…。
「要指導医薬品」は、その指定要件にもあるように、使用する人が自分の選択で使用することを目的としている医薬品です。
そのため、医師による服用指示(処方箋)がなくても、基本的には薬局やドラッグストア等に行くことで、自分の判断で購入することができます。
(※)すべての要指導医薬品を際限なく購入できるというわけではなく、過去に対象疾患の診断・治療を受けたことがある人のみが購入可能というような要指導医薬品も存在しています。
参考までに医薬品医療機器等法の要指導医薬品の定義に関する条文を載せておきます。
要指導医薬品
次のイからニまでに掲げる医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものであり、かつ、その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものとして、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
医薬品医療機器等法 第4条第5項第3号
イ その製造販売の承認の申請に際して第十四条第十一項に該当するとされた医薬品であつて、当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
ロ その製造販売の承認の申請に際してイに掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められた医薬品であつて、当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
ハ 第四十四条第一項に規定する毒薬
ニ 第四十四条第二項に規定する劇薬
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
要指導医薬品については、こんなところにしておきましょう。
続いては「一般用医薬品」についてです。
一般用医薬品
「一般用医薬品」も要指導医薬品と同様に、医薬品の区分のひとつとして医薬品医療機器等法で規定されています。
一般用医薬品の要件としては次の2つが挙げられます。
- ヒトの身体への作用が著しくない(効果が強すぎない)
- 使用する人が自分の選択で使用することを目的としている
要指導医薬品と異なる点として「薬剤師から対面で情報提供や指導を受ける必要がある」という要件がなくなっています。
のちほど解説しますが、一般用医薬品はリスクの程度によって第一類~第三類に区分され、区分ごとに登録販売者による販売が認められていたり、情報提供が必須ではなかったりしますので、
薬剤師から対面で情報提供や指導を受ける必要がある
という言葉が全ての一般用医薬品に対して一律に適合しないためです。
第一類医薬品 | 薬剤師による情報提供が必須 |
第二類医薬品 | 薬剤師または登録販売者による情報提供が努力義務 |
第三類医薬品 | 規定なし |
それでは一般用医薬品の区分について見ていきましょう。
まず、一般用医薬品はリスクの程度によって「第一類医薬品」「第二類医薬品」「第三類医薬品」の3つの区分に分類されます。
更に「第二類医薬品」のうち、特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が指定するものは「指定第二類医薬品」として区分されます。
リスクの程度が大きい順にならべると、
第一類医薬品 > 指定第二類医薬品 > 第二類医薬品 > 第三類医薬品
のようになります。
それぞれの区分について見ていきましょう。
第一類医薬品
まずは、第一類医薬品です。
第一類医薬品は、一般用医薬品の中で最もリスクの程度が大きい医薬品です。使用した際のリスクが高いため、購入時には薬剤師から情報提供を受けなくてはなりません。
ただし、「対面で」の情報提供とは規定されていませんので、インターネット販売が可能です。
…第一類医薬品を販売…する場合には、…薬剤師に、…書面…を用いて必要な情報を提供させなければならない。
医薬品医療機器等法 第36条の10第1項(一部抜粋)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
また、実際のドラッグストアの店舗では、鍵のかかる陳列棚や購入者が直接さわれない場所に商品を並べなくてはならないというルールがありますので、空箱を棚に並べて、実物はバックヤードで保管するという形式をとっているところがあります。
第一類医薬品を陳列する場合には、第一類医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列すること。ただし、鍵をかけた陳列設備その他医薬品を購入し…ようとする者…が直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合は、この限りでない。
医薬品医療機器等法施行規則 第218条の4第1項第1号(一部抜粋)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
次の2種類の医薬品が第一類医薬品に該当します。
- 厚生労働大臣が指定した医薬品
- 新規承認後に一定期間が経過していない医薬品(ダイレクトOTC)
厚生労働大臣が指定した医薬品の一般的名称は、指定告示(厚生労働省法令等データベースサービス)でご確認いただけます。
新規承認後に一定期間が経過していない医薬品は、厚生労働省ホームページでご確認いただけます。
(最近は情報が更新されていないようです…。)
第二類医薬品
続いては第二類医薬品です。
第二類医薬品は、一般用医薬品の中で中程度のリスクを持つ医薬品です。
もしも副作用が起きたときに、その副作用によって日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがあるような一般用医薬品の中から、厚生労働大臣が指定します。
第一類医薬品では薬剤師からの情報提供が必須でしたが、第二類医薬品では薬剤師または登録販売者からの情報提供が努力義務とされています。
…第二類医薬品を販売…する場合には、…薬剤師又は登録販売者に、必要な情報を提供させるよう努めなければならない。
医薬品医療機器等法 第36条の10第3項(一部抜粋)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
「努めなければならない(=努力義務)」という規定ですので、「必須ではないけれど、なるべく情報提供してね」というニュアンスですね。
また、第一類医薬品同様「対面で」の情報提供は規定されていませんのでインターネット販売が可能です。
第一類医薬品と異なり、第二類医薬品では一般の方が直接さわれない場所に商品を並べなくてはならないというルールはありませんので、店舗では実物を手に取って確かめることができます。
厚生労働大臣が指定した医薬品の一般的名称は、指定告示(厚生労働省法令等データベースサービス)でご確認いただけます。(第一類医薬品と共通の告示です。)
指定第二類医薬品
次は、指定第二類医薬品です。
第二類医薬品のうち、特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が指定したものを「指定第二類医薬品」といいます。
指定第二類医薬品は第二類医薬品の仲間ですので、薬剤師または登録販売者による情報提供が努力義務とされています。一方で普通の第二類医薬品よりはリスクの程度が高いため、努力義務とはいいながらも確実に情報提供がされるように、
- 薬剤師等が情報提供する場所(相談台など)から7m以内の場所に陳列すること
- 鍵のかかる陳列棚に陳列すること
- 陳列棚から1.2m以内の範囲に購入者が進入することができないような措置をすること
※3つのうちどれか1つに適合すればOK
などの規定が定められています。
鍵がかかっていれば購入したい人は誰かしらに声を掛けますので、それが情報提供のきっかけになりますね。
指定第二類医薬品の一般的名称は、指定告示(厚生労働省法令等データベースサービス)でご確認いただけます。
また、第二類医薬品同様「対面で」の情報提供は規定されていませんのでインターネット販売が可能です。
第三類医薬品
一般用医薬品の最後、第三類医薬品です。
第一類医薬品と第二類医薬品以外の一般用医薬品のことを「第三類医薬品」といいます。
第三類医薬品は使用時のリスクがあまり高くないため、薬剤師や登録販売者による情報提供の規定はありません。
どの医薬品が第三類医薬品であるかは、告示等では指定されません。一般用医薬品のうち
- 第一類医薬品
- 第二類医薬品
- 指定第二類医薬品
以外の医薬品が第三類医薬品となります。
「対面で」の情報提供は規定されていませんので、第三類医薬品もインターネット販売が可能です。
一般用医薬品については以上です。
薬局医薬品
最後に医薬品の3大区分のうち「薬局医薬品」についてご紹介します。
「薬局医薬品」の定義は簡単です。
「薬局医薬品」とは「要指導医薬品と一般用医薬品以外の医薬品」のことをいいます。
要指導医薬品と一般用医薬品は、まとめて「市販薬」と呼ばれますから、市販薬以外の医薬品、
つまり、病院や薬局で購入する医薬品が「薬局医薬品」ですね。
薬局医薬品を細かく分けると次のように区分されます。
- 薬局製造販売医薬品
- 医療用医薬品
- 処方箋医薬品
- 処方箋医薬品以外の医療用医薬品
まず、薬局医薬品は、「薬局製造販売医薬品」と「医療用医薬品」の2つに分けられます。
さらに、医療用医薬品は「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医薬品」に分けられます。
(薬局製造販売医薬品以外の)薬局医薬品は「対面により」情報提供することとされていますので、インターネットで購入することはできません。
…薬局医薬品を販売…する場合には、…薬剤師に、対面により、…書面…を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
医薬品医療機器等法 第36条の4第1項(一部抜粋)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
一方で、薬局医薬品のうち薬局製造販売医薬品については、法律中の条文を
「薬剤師に、対面により」→「薬剤師に」
と読み替えて適用されます。
その結果として薬局製造販売医薬品については、「対面により」という規定がなくなりますので、インターネットで購入することができます。
…薬局製造販売医薬品…を販売…する場合について法…第36条の4第1項…の規定を適用する場合においては、…法第36条の4第1項中「薬剤師に、対面により」とあるのは「薬剤師に」…とする。
医薬品医療機器等法施行令 第74条の4第1項(一部抜粋)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
それでは、薬局医薬品の区分についてそれぞれ確認していきましょう。
薬局製造販売医薬品
まずは1つ目の「薬局製造販売医薬品」です。
薬局製造販売医薬品とは、「薬局で製造され、薬局において消費者に直接販売される医薬品」のことをいいます。
法令中では「薬局製造販売医薬品」という言葉で登場しますが、厚生労働省の通知中では「薬局製剤」と省略されて登場することが多いです。どちらも正式な呼び方です。
※話し言葉では「薬局製剤」がよく使われますが、「薬局医薬品」とまぎらわしいため、本ページでは「薬局製造販売医薬品」と書きます。
あまり馴染みがない方もいるかもしれませんが、一部の薬局では「薬局製剤指針」に従って独自に、漢方製剤を作っていたり、乾燥肌用の軟膏を作っていたり、胃腸薬を作っていたりすることがあります。
薬局オリジナルの医薬品といえば、なんとなく想像が付くでしょうか?
いわゆる医薬品メーカーが製造販売している医薬品とは異なる、薬局独自で製造される医薬品が「薬局製造販売医薬品」です。
※薬局独自の医薬品とは言うものの、薬局製剤指針に従った調合をしなければなりませんので、「この成分を多めに入れたい」等はできません。
薬局製造販売医薬品は処方箋がなくても購入できますが、購入可能な場所は製造した薬局のみです。
また、上述の通り法律上「薬剤師に、対面により」→「薬剤師に」と読み替えますので、インターネットでも購入することができます。
宣伝になってしまいますので具体的な例は挙げませんが、「薬局製造販売医薬品」で”ググる”と、販売している薬局のホームページがいくつかヒットします。
医療用医薬品
続いて2つ目の「医療用医薬品」です。
テレビのコマーシャル等でもたまに耳にする言葉ですね。
医療用医薬品と同成分・同量配合!
「医療用医薬品」という言葉は、医薬品医療機器等法施行規則という省令で定義されています。
…医療用医薬品として厚生労働大臣が定める医薬品(以下「医療用医薬品」という。)…
医薬品医療機器等法施行規則 第14条第1項(一部抜粋)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
定義について省令で示されてはいるものの、詳しいことまでは規定されていませんので、もう少し踏み込んでみましょう。
厚生労働省のいくつかの通知中に医療用医薬品の定義がありました。
定義 | 発出日 通知番号 |
…医療用医薬品(薬局製造販売医薬品以外の薬局医薬品をいう。以下同じ。)… | 令和4年8月5日 薬生発0805第23号 |
この通知において用いる用語は以下のとおりとする。 医療用医薬品とは、医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの 者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給され る医薬品をいう。 | 平成26年11月21日 薬食発1121第2号 |
医師が患者に施用し、又は処方することを目的とする医薬品(医療用医薬品) | 昭和45年10月20日 薬発第953号 |
昭和、平成、令和と3つの時代の通知を例に挙げてみました。昭和と平成では大体同じようなことを言っていますが、令和の定義は少し毛色が違っていますね。おそらく3つ全てが正しい定義なのでしょう。
医療用医薬品の定義を概念的な観点から表現すると平成や昭和のように「医師によって使用されることを目的とした医薬品」ということで、
販売規制の分類的な観点から表現すると、令和のように「薬局製造販売医薬品以外の薬局医薬品」という表現になるのでしょう。
同じ言葉を異なる角度から説明している、ということですね。
・樹木になる食用の果実を「くだもの」といいます(概念)。
・穀類や野菜以外の植物性の食べ物を「くだもの」といいます(分類)。
医療用医薬品という字ヅラからある程度予想が付くように、病院や薬局などの医療機関で取り扱われる医薬品、と思っておけばよさそうです。
販売に際しては上述のとおり、医療用医薬品は薬局医薬品の仲間ですので薬剤師の「対面」による情報提供が義務付けられており、インターネットで購入することはできません。
医療用医薬品は、処方箋が必ず必要である「処方箋医薬品」と、処方箋が必ずしも必要でない「処方箋医薬品以外の医薬品」の2つに分類されます。
処方箋医薬品
購入する際に必ず処方箋が必要である医薬品を「処方箋医薬品」といいます。
医薬品医療機器等法第49条で規定されています。
(処方箋医薬品の販売)
医薬品医療機器等法 第49条第1項(抜粋)
薬局…又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、…厚生労働大臣の指定する医薬品を販売…してはならない。
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
黄色マーカーでハイライトされた「厚生労働大臣の指定する医薬品」が「処方箋医薬品」のことです。
この条文は簡単にいうと「処方箋を持っていない人に処方箋医薬品を販売しちゃダメ」 ということをいっています。
逆に解釈すると「処方箋医薬品は処方箋がないと購入できない」ということですね。
厚生労働大臣は、告示にて処方箋医薬品を指定しています。指定告示(厚生労働省法令等データベースサービス)でご確認いただけます。
※処方箋医薬品である体外診断用医薬品については「処方箋医薬品として指定される体外診断用医薬品」のページで解説しています。
話が少しずれますが、たまに耳にする「処方薬」は、厳密にいうと「処方箋医薬品」とイコールではありません。
どんな言葉? | どんな意味? | 医薬品の例 | |
処方箋医薬品 | 法令で定義された言葉 | 処方箋が必須の医薬品のこと | 抗がん剤、抗生物質、糖尿病薬…etc |
処方薬 | 慣用的な言葉 | 処方される医薬品のことで、 処方箋の要否は問わない (≒医療用医薬品) | 抗がん剤、抗生物質、糖尿病薬…etc ビタミン剤、痛み止め…etc |
まぎらわしいので、間違えないようにしましょう。
処方箋医薬品には、抗がん剤や抗生物質、糖尿病薬等々、医師が診断した上で処方されるようなリスクの高い医薬品が指定されています。
一方で、ビタミン剤や痛み止めなど比較的リスクの低いものについては処方箋医薬品としては指定されず、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」という区分に分類されています。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品
医療用医薬品のうち、処方箋医薬品以外の医薬品を「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」と表現します。
法令上は定義されていない言葉ですが、厚生労働省の通知中に出てきます。
「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」は、一般的には医師に処方されることで購入しますが、法律上は処方箋がなくても購入することができます。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、法律上処方箋が必須とはされていませんが、その一方で厚生労働省の通知中では、原則処方箋医薬品と同様の取扱いをする旨が示されています。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品については、処方箋医薬品と同様に、医療用医薬品として…薬剤師等…によって使用されることを目的として供給されるものであるため、…薬局においては、処方箋に基づく薬剤師による薬剤の交付が原則であること。
令和4年8月5日 薬生発0805第23号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知(抜粋)
原文は 厚生労働省ホームページ にてご確認いただけます。
ただやはり、法律中では処方箋が必須とされていませんので、処方箋がなくても購入できるようにはなっています。
薬局における処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売…は、要指導医薬品又は一般用医薬品…の販売等による対応を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売等を行わざるを得ない場合に限られていること。
令和4年8月5日 薬生発0805第23号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知(抜粋)
原文は 厚生労働省ホームページ にてご確認いただけます。
市販薬で対応できないときに限り、必要な最小数量を、服薬指導を受けた上で購入することになります。
医薬品の区分まとめ
以上で医薬品の区分については終わりです。
長文お疲れさまでした。
医薬品の区分について、図4にまとめておきます。
数式が好きな方いますか?↓↓
特定販売(インターネット販売)についてもまとめておきましょう。
体外診断用医薬品の区分
さて、ここまでは医薬品の区分について確認してきました。
ようやく本題の体外診断用医薬品の区分について確認していきたいと思います。
体外診断用医薬品は医薬品の仲間ですので、医薬品同様にそれぞれの区分に分類され、区分に応じた販売ルールを守った販売活動がなされています。
まずは図を確認しましょうか。
体外診断用医薬品は、医薬品の区分のうち「薬局医薬品」または「一般用医薬品」に区分されます。
もう少し詳しい分類でいうと、「薬局医薬品」の中の「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」と、「一般用医薬品」の中の「第一類医薬品」「第二類医薬品」に分けられます。
「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」である体外診断用医薬品についてはインターネット販売はできませんが、「第一類医薬品」「第二類医薬品」である一般用検査薬についてはインターネット販売が可能となっています。
一般用医薬品である体外診断用医薬品(一般用検査薬)
一般用医薬品である体外診断用医薬品は、「一般用検査薬」と呼ばれます。
…一般用検査薬(一般用医薬品である体外診断用医薬品をいう。以下同じ。)…
平成26年12月25日薬食発1225第1号 厚生労働省医薬食品局長通知(抜粋)
原文は 厚生労働省ホームページ にてご確認いただけます。
一般用検査薬には、現在次の6種類の体外診断用医薬品が分類されています。
3種類の第一類医薬品と、3種類の第二類医薬品、合計6種類が一般用検査薬に該当します。
…厚生労働大臣が指定する第一類医薬品及び第二類医薬品は、それぞれ次の各号に掲げるものとする。
一 第一類医薬品
ホ 別表第一の二に掲げる体外診断用医薬品二 第二類医薬品
ホ 別表第四に掲げる体外診断用医薬品別表第一の二
一 一般用黄体形成ホルモンキット
二 一般用SARSコロナウイルス抗原キット
三 一般用SARSコロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原キット別表第四
平成19年3月30日厚生労働省告示第69号(抜粋)令和4年12月2日厚生労働省告示第348号による改正後
一 一般用グルコースキット
二 一般用総蛋白キット
三 一般用ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキット
原文は 厚生労働省ホームページ にてご確認いただけます。
新型コロナ検査薬(一般用SARSコロナウイルス抗原キット)も2022年8月24日に第一類医薬品として指定され、一般用検査薬の仲間入りを果たしました。
また、2022年12月2日には、新型コロナ・インフルエンザ同時検査薬(一般用SARSコロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原キット)も第一類医薬品として指定されました。
一般用検査薬の一般的名称は「一般用○○キット」となっていますので、容易に判別できますね。
一般用検査薬は一般用医薬品の仲間ですので、「第一類医薬品」や「第二類医薬品」と同様の販売ルールで販売されます。
また、医療用の体外診断用医薬品は疾病の診断等に利用されますが、一般用検査薬は主にセルフメディケーションに利用されます。
例えば、一般用SARSコロナウイルスキットを使用して陽性となった場合、それは新型コロナウイルス感染症への罹患を意味しません。
病気の診断は必ず医師によって行われる必要がありますので、一般用検査薬の使用はセルフチェックの意味合いが強いです。
一般用検査薬は「一般用医薬品」ですので、インターネット販売が可能です。
医療用の体外診断用医薬品
上記6種類の一般用検査薬以外の全ての体外診断用医薬品は「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に該当します。
特に決まった呼び方はなく、「診断薬」や「検査薬」や「試薬」、まれに一般用の体外診断用医薬品と対比して「医療用の体外診断用医薬品」などと呼ばれます。
(参考)「診断薬」や「検査薬」、単に「試薬」と呼ばれるアレの正式名称とその法的な定義
一般用検査薬は、一般的名称がたったの6種類しかありませんが、医療用の体外診断用医薬品は958種類存在しています。
※958種類のうち、厚生労働省通知で定義付けされているものは956種類です。(「体外診断用医薬品の一般的名称について」、最終改正2023年6月30日)
本ページでは全てを記載するのは避けますが、こちらのページに全ての一般的名称の一覧を掲載しています。
一般的名称の一例を挙げておきます。
- 黄体形成ホルモンキット
- SARSコロナウイルス抗原キット
- インフルエンザウイルスキット
- グルコースキット
- 総蛋白キット
- ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキット
- ビタミンB12キット
- ブドウ球菌キット
ご覧いただいて分かる通り、一般用検査薬に存在するものは、基本的には医療用の体外診断用医薬品にも存在しています。
※1種類だけ医療用に存在しない一般用検査薬があります。新型コロナとインフルエンザを同時に検査する一般用検査薬です。一般用検査薬では「一般用SARSコロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原キット」という一般的名称が付与されていますがこれに対応する医療用の体外診断用医品は存在しません。医療用では一つの体外診断用医薬品に対して「SARSコロナウイルス抗原キット」と「インフルエンザウイルスキット」両方の一般的名称を付与することで運用されています。
一般用検査薬は使用者が自分の健康維持の目安にするために使用します(セルフメディケーション)。それに対して医療用の体外診断用医薬品は、主に医療機関や検査所等で使用され、病気の診断や経過観察等に利用されます。
医薬品のところで述べた通り「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」は、インターネット販売不可です。
まとめ
長文お疲れさまでした。
医薬品は、3つの販売区分に大別されます。
- 要指導医薬品
- 一般用医薬品
- 薬局医薬品
また、一般用医薬品と薬局医薬品は、さらに細分化することができます。
体外診断用医薬品は、一般用医薬品または薬局医薬品の2つに分けることができます。
もう少し詳細に分類すると、「薬局医薬品」の中の「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」と、「一般用医薬品」の中の「第一類医薬品」「第二類医薬品」に分けることができます。
医薬品(体外診断用医薬品)の販売区分については販売ルールに直結するものですので、ぜひとも理解しておきたいところです。
以上です。ありがとうございました。
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