2022年6月毒劇物改正を解説!SDS提供方法の柔軟化

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毒物や劇物を販売・授与する際には、「毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報」を提供しなければなりません。

ジン
ジン

「毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報」…

いわゆる、SDS(Safety Data Sheet)のことですね!

これまでは、SDSの提供方法として、

  • 文書による交付
  • 磁気ディスク等の受取人が承諾した交付方法

の2通りの方法が法令上認められていました。

ジン
ジン

今どき文書(紙ベース)で提供とか古いよねー

紙以外の提供方法は、受取人に承諾とらなきゃいけないから面倒だよねー

と、誰かさんが言ったので、
※私ではないですよ。

毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令
(令和4年6月3日厚生労働省令第92号)

が公布・即日施行され、SDSの提供方法がより柔軟化されました。

今回の改正について詳しく調べましたので、備忘録がてらまとめてみたいと思います。

毒劇物の販売・授与時にはSDSを提供しなければならない

まずは、簡単に図1でSDS提供の法的根拠についておさらいしてみましょう。

毒物劇物のSDS提供については「法律・政令・省令」の3つの法令で規定されています。

図1. SDS提供の法令体系(毒物及び劇物取締法関係法令)

毒物劇物SDSの法令体系では、まずは法律が一番上に来ます。法律では「毒物劇物営業者」の定義が示されています。

毒物や劇物を製造、輸入、販売する人たちのことを「毒物劇物営業者」といいます。「業者」という表現ではありますが、「個人」も含まれます。

法律の次は政令です。政令では、SDS(毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報)の提供について規定されています。

SDSの実質的な法的根拠は、この政令になります。

SDSの提供について(政令)

When(いつ):毒物や劇物を販売するときには、
Who(誰が誰に):毒物劇物営業者は、受取人に
What(何する):毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報(SDS)を提供しなければならない

SDSの提供についての大枠は政令で規定し、提供の方法等の詳細については省令で規定しています。

改正前の省令では、情報の提供方法について次の2通りが示されていました。

  • 文書の交付
  • 受取人が承諾した方法(磁気ディスク等)

改正前は、文書(紙ベース)での提供であれば受取人の承諾は不要でしたが、その他の方法(メールやFAXで送付、ホームページを閲覧させる)で提供する場合には受取人の承諾が必要でした。

 

参考までに各法令の該当する条文を載せておきます(省令は改正前のものです)。

毒物又は劇物の販売業の登録を受けた者でなければ、毒物又は劇物を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、運搬し、若しくは陳列してはならない。但し、毒物又は劇物の製造業者又は輸入業者が、その製造し、又は輸入した毒物又は劇物を、他の毒物又は劇物の製造業者、輸入業者又は販売業者(以下毒物劇物営業者」という。)に販売し、授与し、又はこれらの目的で貯蔵し、運搬し、若しくは陳列するときは、この限りでない。

毒物及び劇物取締法 第3条第3項
原文は 総務省 e-Gov法令検索 でご確認いただけます。

毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を販売し、又は授与するときは、その販売し、又は授与する時までに、譲受人に対し、当該毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報を提供しなければならない。

毒物及び劇物取締法施行令 第40条の9第1項(抜粋)
原文は 総務省 e-Gov法令検索 でご確認いただけます。

令第40条の9第1項及び第2項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定による情報の提供は、次の各号のいずれかに該当する方法により、邦文で行わなければならない。
一 文書の交付
二 磁気ディスクの交付その他の方法であつて、当該方法により情報を提供することについて譲受人が承諾したもの

毒物及び劇物取締法施行規則 第13条の11第項(令和4年厚生労働省令第92号による改正前

※完全に蛇足ではありますが、SDS邦文(日本語)で記載されていなければなりません。毒物劇物輸入業者(毒物や劇物を外国から輸入して日本国内に販売する業者)は、製造元作成の外国語SDSをそのまま利用することがないように注意が必要ですね。

 

改正でココが変わった:受取人の承諾不要な提供方法が増えた

上でも挙げたように、

ジン
ジン

今どき文書(紙ベース)で提供とか古いよねー

紙以外の提供方法は、受取人に承諾とらなきゃいけないから面倒だよねー

と、誰かが言ったので、
※重ねて申し上げますが、私ではないですよ。

受取人の承諾が不要な提供方法の範囲を広げるような改正が行われました。

SDSの詳細な提供方法については省令で規定されていますので、今回の改正では、省令の改正が実施されました。図2に改正の様子を示します。

図2. 今回の改正は省令の改正です

で、実際に中身がどのように変わったのかというのが次の図3になります。

図3. 省令の条文、改正前後

条文中の「二(第2号)」のところが、改正されていますね。

改正前は「磁気ディスク」しか例が挙がっていませんでしたが、改正後は次のように提供方法が明確に示されました。

  • 磁気ディスク(フロッピーディスク等のこと)の送付
  • 光ディスク(CD、DVD、ブルーレイ等のこと)の送付
  • その他の記録媒体(USBメモリ等のこと)の送付
  • 電子メールの送信(メール本文にベタ打ち、PDF等の添付)
  • 情報が記載されたホームページのアドレス(二次元コード等も可)及びホームページの閲覧を求める旨の伝達

なお、改正前は受取人の承諾を得られた方法であればどんな方法でもOKでしたが、改正後は上の5つの方法に限られます。

別途Q&A通知等が発出されれば話は別ですが、基本的には5つの方法以外での情報提供は、法令に則らない方法ですのでご注意ください。(例:FAXでの送信、独自の情報提供システムによる情報提供等)

 

文字だけだと脳が拒絶反応を起こしますので、視覚的に分かりやすいように図4を作成してみました。

図4. 改正前後をわかりやすく

提供方法の注意点

今回の改正では、磁気ディスクや光ディスク、その他の記録媒体の送付、電子メールの送信、情報が記載されたホームページのアドレス及びホームページの閲覧を求める旨の伝達という提供方法が示されましたが、

各方法の中にはSDSを提供する際の注意点が、厚生労働省からの通知で規定されているものもありますのであわせてご紹介します。

メール送信の注意点

1つ目は、電子メールでSDSを送信する際の注意点です。

電子メールで送付する場合には、送信先のメールアドレスを事前に確認し、SDSを確実に送信できるようにしなければなりません。

例えば、製品(SDS対象化学物質)のご注文確認メールにSDS確認用URLを記載しておき、顧客がそのURLをクリックしたらSDSのページが開いて同時に注文確定となるようなシステムを構築することで、確実な情報提供がなされますね。

また、それほど難しいシステムでなくても、自社の製品情報を定期的にメール配信するなどしてメールアドレスの有効性を確認しておくことも対策として挙げられるでしょう。

なお、定期的な配信メールは顧客の方で振り分けフォルダの設定がされていることが多々ありますので、大事なSDSの提供メールが定期配信メールに埋もれてしまわないように、定期配信用アドレスとSDS用のアドレスは別のアドレスを使用した方がよいでしょう。

<例>

定期配信用アドレス:info@xxxxx-inc.co.jp

SDS提供用アドレス:info@sds.xxxxx-inc.co.jp
(ドメインレベルで振り分け設定する顧客も存在する可能性もあるため、ドメイン部分を変更するといいでしょう)

ただただSDSを送信すれば良いというわけではなく、確実に受取人にSDSが届くように各企業での提供実態にあわせた様々な工夫が必要ということですね。

電子メールの送信によりSDS等を交付する場合は、送信先の電子メールアドレスを事前に確認する等により確実に相手方に伝達できるよう留意すること。

毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令の施行について(令和4年6月3日 薬生発0603第9号)
原文は 厚生労働省法令等データベースサービス でご確認いただけます。

ホームページで閲覧させるときの注意点

2つ目は、ホームページ上で閲覧させる際の注意点です。

ホームページ上で閲覧させる際には、次の2つを顧客に伝達しなければなりません。

  • 情報が記載されたホームページのホームページアドレス
  • ホームページの閲覧を求める旨

例えば次のように製品ラベルに記載しておけばよいです。

製品ラベルに表示する例

製品をご利用の際は、下記ホームページよりSDSをご確認の上、適切にお取扱いください。

URL:https://www.xxxxx-inc.co.jp/sds/catalogno-11111

ジン
ジン

「ホームページの閲覧を求める旨バッチリですね!

ここで注意すべきことは、記載するアドレスは「企業のトップページ」ではなく「SDS等を容易に確認可能なウェブページ」のアドレスにしなければならないということです。

もしも「企業のトップページ」のアドレスが記載されていると、受取人がSDSを探すのに苦労します。

SDSは、毒物劇物営業者側から受取人に対して能動的に提供されるものですので、受取人自らが情報を取得しに行くという構図は望ましくありません。

「SDS等を容易に確認可能なウェブページ」へのURLの記載が必要です。

ホームページ上のSDS等をアドレスの伝達により閲覧を求める場合には、譲受人においてSDS等を容易に確認可能なウェブページのURLとすること。例えば、企業のトップページなど、当該物質のSDS等に容易に辿り着けないページのアドレスを伝達することは、令第40条の9における情報提供として適切とは言い難いことに留意する必要がある。

毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令の施行について(令和4年6月3日 薬生発0603第9号)
原文は 厚生労働省法令等データベースサービス でご確認いただけます。
ジン
ジン

ただし、厚生労働省の通知では「個々の製品のSDS」へのURLまでは求められていません。

ですので、製品ごとにURLの記載を変更する必要はありません。

全製品のSDSのリストを掲載したページ等を作成しておけば、そのURLひとつで簡単にSDS提供できますね。

通知を意識しているのかは不明ですが、こちらのサイト様では上手に対応されていますね。さすが大企業様です。

施行日は2022年6月3日

本ページでは2022年6月改正の毒劇法についてご紹介しました。

今回の改正は、2022年6月3日に公布され、即日施行されました。

受取人の承諾が必要ないSDS提供方法の範囲が広がりましたが、その提供方法を適用する上で留意しなければならないことがいくつか存在します。

 

SDS提供の本来の意味が損なわれないように、受取人に確実に情報提供できる体制を確立、維持していけたらと思います。

引き続き法令遵守に努めたいと思います。

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