こんにちは、
いまだに「FD申請」から抜け出せない、ジンです。
どうも!
医薬品医療機器等法上には、数えきれないほどたくさんの種類の薬事手続き(申請や届出、申出など)が存在します。行政への薬事手続きは、「紙申請(紙の書類を提出する方法)」のほか、「FD申請」や「オンライン提出」という方法で書類を提出することが法令上認められています。
様々な申請書類の提出方法がある中で、今回「FD申請」について改正がありましたのでご紹介します。
FD申請…FD(フレキシブルディスク)に申請データを入れて提出する方法やね。
※フレキシブルディスク:フロッピーディスクの正式名称
今回の改正は、言葉の変更が主であり、実際の運用方法が大きく変わるといったことはありませんのでご安心ください。
改正の概要(何が変わったのか?)
2023年12月26日に「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第161号)」が公布され、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)」の一部が改正されました。
改正内容はいくつかありますが、本ページでは「FD申請」関係の改正についてご紹介します。
今回の改正では、薬機法施行規則第284条の「フレキシブルディスクその他これに準ずる物として厚生労働大臣が定めたもの」という記載が「電磁的記録媒体」という言葉に改められました。
改正前は、FD申請に利用可能な媒体を薬機法施行規則上で「フレキシブルディスクその他これに準ずる物として厚生労働大臣が定めたもの」と規定し、その他の物として「CD-ROM」と「DWAP提出データ」が厚生労働省通知で補足説明されていました。すなわち、改正前の時点で利用可能な媒体は「FD、CD-ROM、DWAP提出データ」の3つでした。
今回の改正によって、「フレキシブルディスクその他これに準ずる物として厚生労働大臣が定めたもの」から「電磁的記録媒体」に改められました。「電磁的記録媒体」の例については厚生労働省通知で「FD、CD-ROM、DWAP提出データ」の3つが示されました。
今回の改正は、薬機法施行規則中の言葉が少し変わっただけであり、実際に利用可能な媒体には変更はありません。
(FD、CD-ROM、DWAP提出データ)
ただし、FDについては、申請先の機関でFDが利用できなくなった時点でFDによる申請等の受付を終了するという方針が通知中で示されています。
申請等を受け付ける各機関において、FDによる申請等を受け付けることのできる体制の維持が困難になり次第、当該機関でのFDによる申請等の受付を終了することとする。
令和5年12月26日付け医薬発1226第5号 電磁的記録媒体を利用した申請等の取扱い等について(通知)
FDの国内生産は2011年に終了しているようですから、しかたないですかねぇ。
うちのFDの在庫はこの前使い切ったから安心だな!
使わず保管しておけば価値が上がったかも…
(改正前)FD申請とは?
医薬品医療機器等法の規定による医薬品等の申請等について、FD(フレキシブルディスク)等により書類を提出することを「FD等申請等」といいます。
単に「FD申請」と、略して言うことが多いです。
FD申請は、申請者の負担軽減を図るため、それまで紙の書類でおこなっていた手続きを電子化することによって、行政に対する申請等を簡単にしましょう!ということで採用されました。
薬事法(現在の医薬品医療機器等法)に基づく薬事手続きだけでなく、毒劇法関連の申請や自動車登録、不動産登記など、行政に対する様々な手続き方法の一つとして、FD申請が採用されています(いました)。
医薬品医療機器等法におけるFD申請にフォーカスしましょう。
時は1995年2月23日。当時の厚生省は、紙申請に代わるものとしてFD申請を利用できるように、当時の薬事法施行規則を改正する省令を公布しました(平成7年2月23日厚生省令第4号)。その結果、同年の4月1日から様々な薬事手続きにおいて、順次FD申請が可能になっていきました。
当時の条文を載せておきます。
第73条(フレキシブルディスクによる手続)
一部を抜粋
次の表の…書類…については、これらの書類の各欄に掲げる事項を記録したフレキシブルディスク並びに申請者、届出者又は申出者の氏名及び住所並びに申請、届出又は申出の趣旨及びその年月日を記載した書類…をもつてこれらの書類に代えることができる。
薬事法施行規則第73条(平成7年2月23日厚生省令第4号による改正後、平成7年4月1日施行)
こうしてめでたく薬事手続きにおけるFD申請がスタートしたわけですが、フロッピーディスクがOKなら他の記録媒体もOKじゃね?ということで、
2年後の1997年に薬事法施行規則がさらに改正されて「その他これに準ずる物として厚生大臣が定めたもの」も使用できるようになりました。
改正前 | 改正後 |
…フレキシブルディスク並びに…を記載した書類…をもつてこれらの書類に代えることができる。 | …フレキシブルディスクその他これに準ずる物として厚生大臣が定めたもの並びに…を記載した書類…をもつてこれらの書類に代えることができる。 |
小泉純一郎さんが厚生大臣だった頃ですね。
「その他これに準ずる物として厚生大臣が定めたもの」としては、通達によって「CD-ROM」と定められました。過去の通達が見つからず※いつからCD-ROMでの申請が可能になったのかは不明ですが、少なくとも2005年の通達では「CD-ROM」が利用できる旨が記載されています。
※本ページの一番下の方に、該当すると思われる通達を挙げていますので、情報をお持ちの方はご一報ください。
それから時は流れ、2022年2月16日。「その他これに準ずる物として厚生労働大臣が定めたもの」として、「DWAPにおいて作成する、電磁的記録媒体を利用した申請等の対象となる書類の各欄に記載すべき事項について記録した情報を提出するためのデータ(DWAP提出データ)」が追加されました。医療機器のみが該当します。
最終的には2023年12月25日時点で、FD申請においては次のものが利用可能となっていました。
(改正後)電磁的記録媒体による申請
2023年12月26日の薬機法施行規則により、「フレキシブルディスク」という表現が「電磁的記録媒体」に改められました。これにより「FD申請」という言葉がなくなり、「電磁的記録媒体による申請」となりました。
あまり聞き馴染みのない「電磁的記録媒体」という言葉ですが、医薬品医療機器等法施行規則の中で「電磁的記録に係る媒体」という風に説明されています。
…ほぇ?
例えば、パソコンからFDにPDFファイルを移動するといったとき、PDFファイルが「電磁的記録」に該当し、パソコンやFDが「電磁的記録媒体」に該当します。
※正確にはパソコンの中の「ストレージ(HDDやSSD)」が「電磁的記録媒体」に該当します。
「電磁的記録媒体」とは、電磁的記録を保管しておくための入れ物のことだと思ってください。
じゃあ、USBメモリとかSDカードなんかも「電磁的記録媒体」かい?
そういうことですね。
世の中には非常にたくさんの種類の電磁的記録媒体が存在しますが、その中でも薬事手続きに利用できるものは次の3つだけです。
USBやSDカードなどは容量が大きく、コンピュータウイルスを仕込まれるおそれがあるとのことから利用不可とされており、現状は上記3つのみが利用可能となっています。
まとめ
2023年12月26日に薬機法施行規則が改正され、「フレキシブルディスク」という言葉が「電磁的記録媒体」に改められました。
今回の改正は、言葉の変更が主であり、実際の利用可能な媒体(FD、CD-ROM、DWAP提出データの3つ)に変更はありませんのでご安心ください。
なお、「DWAP提出データ」は医療機器独自のものであるため、体外診断用医薬品においては「FD、CD-ROM」の2択となります。また、FDによる受付が終了した後では「CD-ROM」の1択になります。
現状、薬事手続きにおいて利用可能な方法は次の3つです。
- 紙申請
- 電磁的記録媒体による申請(旧FD申請)
- オンライン提出
このうちの2番目の申請方法に変更がありました、というのが今回のお話でした。
時代はどんどん、デジタル化の方向に進んでいきますね。
ありがとうございました!
ご協力のお願い
本ページをご覧いただきありがとうございます。
本ページの内容をより充実させるため次の2つの行政通知を探しています。もし何か情報をお持ちの方は、コメントまたはお問合せ欄からお知らせいただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
- 薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行及びフレキシブルディスク申請等の取扱い等について(平成7年3月31日付け薬発第347号薬務局長通知)
- フレキシブルディスク申請等の取扱い(平成9年3月27日付け薬発第413号薬務局長通知)
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