体外診断用医薬品とは?定義

この記事は約6分で読めます。

「体外診断用医薬品」と聞くとどんなものが思い浮かぶでしょうか?

ドラッグストアで販売されている体外診断用医薬品には、妊娠検査薬や排卵日予測検査薬、尿蛋白や尿糖の検査薬がありますね。

よく「診断薬」や「検査薬」、単に「試薬」と呼ばれるアレの正式名称と、その法的な定義もろもろをご紹介します。

正式名称

まずは名称についてです。「診断薬」や「検査薬」など色々な呼び方がありますが、正式な名称は「体外診断用医薬品」です。

下でも出てきますが、体外診断用医薬品という言葉は、医薬品医療機器等法で定義されています。

また、旧薬事法施行規則の時代には「体外診断薬」と表現されていたことがあり、その名残りとして現在の医薬品医療機器等法施行規則でも別表第3に「体外診断薬」という言葉が残されています。

ただ、施行規則中では「体外診断薬」の定義が明示されていませんので、法律中の「体外診断用医薬品」と、施行規則中の「体外診断薬」の関連性は少しあいまいな気がします。

ジン
ジン

「体外診断用医薬品」と言っておけば間違いないですね。

なお、ドラッグストアなどで一般の方が購入できる体外診断用医薬品のことを「一般用検査薬」と言います。

「一般用検査薬」は厚生労働省の通知によって定義されています。

医薬品医療機器等法上の定義

「体外診断用医薬品」という言葉は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」という法律で定義されています。

具体的には条文中に下記の通り記載されています。

この法律で「体外診断用医薬品」とは、専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう。

医薬品医療機器等法第2条第14項
原文は 総務省 e-Gov法令検索 で直接ご確認いただけます。
ジン
ジン

「医薬品のうち」とありますので「体外診断用医薬品」は医薬品の仲間ですね。ついでに「医薬品」の定義も見ておきましょう。

「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一 日本薬局方に収められている物

二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの

三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの

医薬品医療機器等法第2条第1項(一部省略)
原文は 総務省 e-Gov法令検索 で直接ご確認いただけます。

 

条文だけをみて理解できる人はそう多くはないと思いますので、

体外診断用医薬品の大まかな位置付けを示すために簡単に図示してみました。

図1.体外診断用医薬品の位置づけ

「医薬品」の中の「専ら疾病の診断に使用されてることが目的とされている医薬品」の中の「人又は動物の身体に直接使用されることのないもの」が医薬品医療機器等法上の「体外診断用医薬品」の定義となります。

承認されていなくても体外診断用医薬品?

よく、「診断薬として承認された」「薬事承認されてないから診断薬ではない」等の言葉を聞きますが、これは厳密にいうと誤りです。

理由は、体外診断用医薬品の定義(と医薬品の定義)を確認すれば一目瞭然です。

 

上で示した通り、体外診断用医薬品の定義 (と医薬品の定義) の中には「承認」という言葉は出てきません。

「承認されていること」は体外診断用医薬品であるかどうかを判断するときには関係ないのです。

 

専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品であって、人又は動物の身体に直接使用されることのないもの

であれば、すべてが体外診断用医薬品に該当し、医薬品医療機器等法の規制を受けることになります。

 

例えば、研究や試験等でよく使うことがある試薬に「pH試験紙(リトマス試験紙)」があります。

pH試験紙自体は溶液中のpHを測定するもので、単なる研究用試薬ですが、

「使用目的:尿中のpHを測定(認知症の診断の補助に用いる)」

というラベルを張って、「認知症診断専用の」pH試験紙としてみたらどうなるのでしょうか。

 

ラベルが張られたpH試験紙は、

人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの

【医薬品の定義】

に該当することになりますので、医薬品とみなされ、なおかつ、

専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品であって、人又は動物の身体に直接使用されることのないもの

【体外診断用医薬品の定義】

にも該当しますので、体外診断用医薬品とみなされます。

(pH測定によって本当に認知症が診断できるかどうかは関係ありません。「認知症診断専用の」という目的があるかどうかで、体外診断用医薬品かどうかが決まるということです。)

 

※上記は例え話です。pH測定では認知症診断はおそらくできないでしょう。

定義制定前の体外診断用医薬品

体外診断用医薬品が法律上で明確に定義されたのは、平成17年のことです。

それまでは、昭和60年発出の通知によって体外診断用医薬品の範囲が示されていました。

通知の内容は次の通りです。

体外診断用医薬品は、人に由来する試料を検体とし、(2)に示す検体中の物質等を検出又は測定することにより、(1)に示す疾病の診断に使用されることが目的とされているものであって、人の身体に直接使用されることのないものである。ただし、病原性の菌を特定する培地、抗菌性物質を含有する細菌感受性試験培地及びディスクは、これに含まれる。なお、(3)の形態以外の体外診断用医薬品に関する取扱いについては、別途指示する。

昭和60年6月29日薬発第662号
原文は 厚生労働省 法令等データベースサービス で直接ご確認いただけます。

(1) 目的
次のいずれかを目的とするもの
(ア) 各種生体機能(各種器官の機能、免疫能、血液凝固能等)の程度の診断
(イ) 罹患の有無、疾患の部位又は疾患の進行の程度の診断
(ウ) 治療の方法又は治療の効果の程度の診断
(エ) 妊娠の有無の診断
(オ) 血液型又は細胞型の診断

昭和60年6月29日薬発第662号
原文は 厚生労働省 法令等データベースサービス で直接ご確認いただけます。

(2) 対象
検体中の次の物質又は項目を検出又は測定するもの
(ア) アミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖、脂質、核酸、電解質、無機質、水分等
(イ) ホルモン、酵素、ビタミン、補酵素等
(ウ) 薬物又はその代謝物等
(エ) 抗原、抗体等
(オ) ウイルス、微生物、原虫又はその卵等
(カ) pH、酸度等
(キ) 細胞、組織又はそれらの成分等

昭和60年6月29日薬発第662号
原文は 厚生労働省 法令等データベースサービス で直接ご確認いただけます。

(3) 形態
(ア) 複数の試薬(試薬を含有する紙、布等を含む。)により、前記(2)の物質又は項目を検出若しくは測定する形態(いわゆるキット)なお、キットから標準試薬(例、標準血清)を除いたものは、これに含まれる。
(イ) 単試薬により、前記(2)の物質又は項目を検出若しくは測定する形態

昭和60年6月29日薬発第662号
原文は 厚生労働省 法令等データベースサービス で直接ご確認いただけます。

この通知は、平成17年の旧薬事法改正後も廃止されることなく残り、現在でも一部の通知で引用されています。

最後に

当ページでは「体外診断用医薬品」の法律上の定義やその範囲についてご紹介しました。

体外診断用医薬品について少しでも理解が深まったなら幸いです。

以上です。ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました